今週、Amazonで最も注目された本をカテゴリ別に毎週更新しています。買いたい本が決まっていないときの参考にどうぞ!
1位 バカと無知―人間、この不都合な生きもの―(新潮新書) 言ってはいけない
著者:橘玲
発行日:2022年10月15日
トップレビュー
投稿者:みのるお
「バカと無知―人間、この不都合な生きもの―」(橘玲)を読む。
さて、われらが橘玲の新作である。例によって身も蓋もない話であることこの上ない。 前書きに安倍元首相を銃撃し殺害した41歳の男の話が書かれている。統一教会の話で世間は持ち切りだが、皆が彼と「ジョーカー」の類似性を思い浮かべたはずだ。脳は特定の精神的タスクがない状態=つまりぼーっとしている状態では絶えずさまざまなシミュレーションを繰り返している。脳は予測と修正を繰り返す高機能シミュレーションマシンだというのが最近の脳科学の見方だ。過去に向かっては反省と後悔をし、未来に向かっては希望と絶望を繰り返す。このシミュレーションを束ねるものとして脳が生み出したのが「自己意識」だ。高い知能を持ちながらも母親の宗教により大学にも行けず、自衛隊を退職した後いくつかの資格はとったものの、仕事もうまく行かず恋人にも捨てられ、40になって社会からも性愛からも排除された男が向かった先がこの事件である。われわれはそのような厄介な自己意識を抱えた存在なのである。 脳の仕様は「被害を極端に過大評価し、加害を過小評価する」ようにできている。これが個人間の人間関係から国家間の歴史認識まで、事態を紛糾させる原因だ。わたしたちはつねに、「自分は正しい」という前提で生きている。そして他者の悪を罰することはこの上もなく気持ちいい。「バカの問題は、自分がバカであることに気づいていないことだ」 なんと身も蓋もない言葉だろう。でも、自分がバカだと気が付くことには知性が必要だ。それに気が付かないからバカなのだ。バカとバカでないものが議論をすると、バカでないものは自分が間違っているかもと考え、バカは自分が正しいと信じているので、バカが勝つ。これが民主主義の本質だ。間接民主制によって一定のバカを排除したうえでリーダーを決める議院内閣制が直接選挙の大統領制よりもリスクが少ない理由がこれだ。賢者が愚者に引きずられることを平均効果と呼ぶ。よりよい決定に導くためには愚者を決定の場から排除する必要がある。民主政より貴族政や封建政を支持する一定の根拠である。 ヒトは①自分が所属する集団を一番にしようとする天下統一ゲームと②その集団のなかで自分がのし上がろうとする下克上ゲームを同時に行なうという複合ゲームを行なっている。絶対的な損得(経済合理性)よりも相対的な損得(進化的合理性)が意思決定に影響するのは②から説明できる。「自分が10、相手が11」から「自分が1、相手が0」の捨て身の戦略も合理的なのだ。集団の力を削いででも同じ集団内のライバルの力を削ぐ戦国武将はいくらでもいたし、そんなサラリーマンは掃いて捨てるほどいる。集団内の序列はそれほど死活的な問題なのでマウンティング合戦が起こる。マウンティングされたと感じると自己防衛警報が鳴り響き、自分の9を失っても相手の11を奪いに行く。その結果所属する集団は20の利益を失ってもだ。 下克上ゲームが好きなヒトは、善意の名を借りて無力の人間をサポートする側に回ることで、承認欲求が満たされ引き上げられる。ボランティアだ。ボランティアは絶対的な損得=経済合理性の観点からはサポートされる側に純粋な利益をもたらす。しかしその背後にはマウンティングがある。ボランティアのうさん臭さはそこにある。 家族や地域、学校や会社、国家や民族などの共同体からもたらされる安心感やあたたかさは、共同体のメンバーでない者を排除することから得られる。共同体が成立するには、原理的に外部が存在しなければならないからだ。だから残念なことに、内集団が外集団を必要とする以上、「人類という家族」になることはない。勝利には敗者が必要で、コスタリカが勝利するには日本が敗者とならねばならず、ワールドカップで優勝に歓喜するには山のような敗者となる国が必要なのだ。 「すべての記憶は偽物」だ。近年の脳科学のもっとも大きな発見のひとつは、脳には記憶が「保存」されていないこと、つまり、記憶はある種の「流れ」であり、思い出すたびに書き換えられているということだ。幼児期の性的虐待は80年代から主にアメリカ社会を混乱させてきた。PSTDがメンタルヘルス業界に巨大な収益機会をもたらし、膨大な数の訴訟を産んだ。記憶はセラピーで再構成可能だからだ。エイリアン・アブダクションだって可能なんだから。とまあ、いつものようにとても面白い書物なのだが、元気出ないことこの上ない。なんという世界であることよ。
2位 限りある時間の使い方
著者:オリバー・バークマン
発行日:2022年08月16日
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投稿者:あーちゃん
時間の捉え方が変わる
時間の捉え方を多方面から論じている。所謂how-to本とは異なる。自分の時間の使い方について考えさせられる一冊。
3位 成熟スイッチ (講談社現代新書)
著者:林 真理子
発行日:2022年11月17日
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投稿者:もち
成熟したい
地方出身の冴えない大学生がコピーライターから流行作家になって、ヒット作も連発し、多くの文学賞の選考委員にまでのぼりつめ、もうこのまま大御所作家としてのんびり優雅な老後を過ごすことだってできるのに、68歳で日大理事長を引き受けちゃうんだから、林真理子の人生ってやっぱりおもしろいなあ~と感心してしまいます。 ここまで野心のかたまりで強運の持ち主が語る人生訓なんて、一般市民にはたいして役にもたたない御託が並べられていることが多いのですが、人づきあいの秘訣や人としての振るまい方などを、有名人とのエピソードなど交えて軽妙に語られていて、とても興味深く読むことができます。どんなに成功しても思い上がらずに、人づきあいにここまで配慮して礼儀を重んじているから、高齢者になっても華麗な人脈や仕事が途切れることなく続いていくのだろうなあ・・・気難しくていつも不機嫌で誰も寄り付かないような老人にはなりたくない。林真理子のようにゴージャスで面白い人生は送れないにしても、好奇心旺盛で陽気な高齢者になれるよう成熟したいと感じました。特に、中高年の方には一読をおススメします。
4位 勇者たちの中学受験~わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき
著者:おおたとしまさ
発行日:2022年11月12日
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投稿者:Amazon カスタマー
内容は良いが、名前考えてほしい
こういうルポで、漢字の読みにくい名前を出すのをやめてほしい。毎回何と読むのか考えるのがストレス。内容は、リアルで共感できた。こうはならないという戒め、本番のシュミレーションになった。
5位 解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法
著者:馬田隆明
発行日:2022年11月19日
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投稿者:furuyatakenori
自分自身の”ビジネス大全”をつくるように読め!
ビジネスパーソンが、新規事業や起業、現業の改善などに取り組むうえで、大切にしなければいけないことー特に、習慣化するとよいことーが、既刊の3冊同様に、実に体系的に、分かりやすくまとめられていました。新しい顧客を対象に、新しい価値を備えた事業を企画して、生涯の仕事にしようと考えている人は、ぜひ手にするとよいでしょう。既知のことも書かれていますが、そこはそこでより大切なことと認識して、未知のことも含めて、自分自身の”ビジネス大全”をつくるようなイメージで読んでいくとよいと思います。
6位 無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記
著者:山本 文緒
発行日:2022年10月19日
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投稿者:がんばれパトカー
静かだけれどとても良い読書をさせていただきました
大学生の頃に何冊か読んで好きだと思った作家さん、そして、社会人になって改めて読んでみたら「あれ、なんか今の私の恋愛の価値観とは違う、大学生の頃はこんな恋愛に興味があったんだなあ」と感じたこともよく覚えています。それもあって、それ以降はご無沙汰でした。あれから20年以上。山本さんご自身も私と同じように年を重ね、私と違って人々の心に残る作品を沢山作り、最近お亡くなりになったのですね。そう思うと不思議な気持ちにもなりました。この作品は私と同じように中年となった山本さんの闘病(逃病)記です。20代後半からは、私と山本さんの道は分かれたものの、またここでお会いしたような、そんな気持ちで、とても静かだけれど良い読書をさせていただきました。装丁も素敵でした。
7位 乃木坂46写真集 乃木撮 VOL.03
著者:乃木坂46
発行日:2023年01月24日
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8位 負けない人生
著者:古川 智映子
発行日:2022年10月20日
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投稿者:青木
素晴らしい人生劇を歩んで来られた古川さんの本です
お友達にもプレゼントし大変に感動したと言われました
9位 Quadruple Axel 特別版 羽生結弦 栄光の軌跡 (別冊山と溪谷)
著者:山と溪谷社
発行日:2022年12月14日
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10位 13歳からの地政学: カイゾクとの地球儀航海
著者:田中 孝幸
発行日:2022年05月13日
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投稿者:Meisaku
モノリンガル大国日本からの脱却
まず、なぜアメリカが強大な国家であるか。それは、広大な国土に豊かな天然資源がある事はもちろん、国土の割には国境を守る負担が低く、海底ケーブルで情報を押さえ、ドルで通貨を支配し、移民で世界中から優秀な人材を集め、国土を取り巻く大きくて深い海に原子力潜水艦を潜ませて核爆弾を自在に放つ潜在力を持ち、世界中に配置した海軍で有事には貿易もコントロールできるなど、奇跡的に物理的にも立地的にも恵まれているからだ。ただ、これらの強力な利点を活かす源泉がないと国家として機能しない。その源泉とはアメリカが民族意識よりも国家意識が高い事にある。アメリカ大統領選挙は盛大なイベントだが、あれこそ、多民族国家であるにも関わらず、民族意識よりも国家意識を高めている証といえる。こんなアメリカでは中国の様な少数民族の問題など起きないわけだ。それに対して、アフリカは、民族意識が国家意識を凌駕していて、政治的リーダーは、国よりも自分の民族を優先させる事に走るので、結果的に腐敗や汚職が蔓延し、国家としての成長ができない。アメリカの対抗馬である中国は、アメリカと比較して国境リスクも民族問題も多く、しかも圧倒的に海に恵まれていないので、南シナ海を抑えることに躍起になっているわけだ。この著書の醍醐味は、この様な地政学の整理で終わらず、対話を通じて示唆やヒントに富んでいることだ。たとえば、後半に出てくる他国とバランスを取る必要性の低い大国の課題として自国の言葉しか話さない自国優先的な”モノリンガル”の傾向であるという指摘は今の日本に置き換えると示唆に飛んでいると感じた。このバイリンガルやトリリンガルの反対語のモノリンガルと言う言葉がとても刺さる。日本も海や人口や国境リスクの低さなどに恵まれてきた事により、日本語や日本市場だけでも成長できたモノリンガル大国である。しかし、世界の大国になったとはいえ、アメリカほど強大ではなく、最近では少子高齢化や経済停滞などにより大国から小国へ向かおうとしている。この本でも書かれている通り、世界の小国の外交官は多言語を操り、他国との微妙なバランスに苦心してきたわけだ。モノリンガル日本が大国の存在感を失いつつあ今、モノリンガルから脱却し、世界中から人材や情報を集めたり、世界に向けて発信していく多様性や機動力が求められてきている。日本は、アフリカ諸国と違って、国家機能が強い国である事を活かして、多民族国家への道も個人的には推奨したいと感じた。元々、日本は移民からできた国であり、また、アメリカと同じく、民族意識よりも国家意識が高い国であるという利点を鑑みれば、日本は多民族化を内包し、モノリンガルから脱却しつつ新たな国家として再生できる可能性を秘めていると思う。
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