映画化決定!! 笑いのカイブツ 感想レビュー

小説

今回ご紹介する本はこちら!

「笑いのカイブツ」です。

2017年に出版された自伝小説で、2022年には岡山天音さん主演で映画化も決定されています。

作者は、深夜ラジオやテレビ番組の大喜利投稿で伝説のハガキ職人となったツチヤタカユキさん。

人間関係不得意である彼がただ一つ世界とつながれる ”お笑い”。

成功ってなんだろう。幸せって何だろう。そんなことを考えさせてくれる、素敵な作品でした。

今を必死に生きているあなたに読んでほしい一冊。

そんな「笑いのカイブツ」の感想を、どうぞ。

ツチヤタカユキ「笑いのカイブツ」あらすじ

人間関係が極度に不得手のため、孤独な日々を送る青年は、「お笑い」に生きることを決意する。
青春のすべてをテレビや雑誌の投稿企画に費やし、ネタ出しはどんどん加速。ついには日に2000本のボケを作るようになり、深夜ラジオでは広く知られる「伝説のハガキ職人」になるがーー。
人間の価値は、人間からはみ出した回数で決まる。
僕が人間であることをはみ出したのは、それが初めてだった。
僕が人間をはみ出した時、カイブツが生まれた瞬間ーー

その男、あまりにおもしろく、あまりに不器用。他を圧倒する質と量、そして”人間関係不得意”で知られる伝説のハガキ職人、ツチヤタカユキ、27歳、童貞、無職。

「僕は今、笑いに一番近いところにいる。ここで死なせてくれ」

その孤独にして熱狂的な道行きが、いま紐解かれる。

感想 評価 9/10

勉強も運動もてんでダメ。

そんなツチヤが唯一楽しみを見いだせた「お笑い」。

人間からはみ出した回数で、人間の価値は決まるという哲学のもと、お笑いに没頭していく。

大喜利番組レジェンド段位までの絶望。
吉本の劇場作家での絶望。
ハガキ職人時代の絶望。
初めての恋人を失った絶望。

あらゆる絶望を経験してもなお、お笑いと生きていく彼の半生が描かれた自伝的小説です。


書店に行くと様々な業界で成功した人たちの書籍が並んでいます。

そこに書かれていることは強くて、たくましくて、明日を生きる原動力になる言葉。

ただ、ふと思うんです。
そこに、もがき苦しんでいる人たちのリアルは存在するのかなって。

この作品には、お笑いに没頭し、狂い、果てに「笑いのカイブツ」になったツチヤの現実があります。

お笑いにすべてを捧げ、他の一切を排除してきたツチヤは、毎日ボケを生み出します。

母の冷たい視線をまるっきり無視して、起きている時間を大喜利に費やせる状況になった僕は、一日に出すボケ数のノルマを1000個から2000個に増やした。

~いつもボケが1500個を超えたあたりで、誰かに殴られているみたいに、頭がガンガンして、死にたい気分になった。加速したい気持ちに、脳と身体が全然ついてこれていなかった。
それでも毎日、ノルマの2000個に到達するまで、僕は絶対に、全力疾走をやめなかった。

ここまでくると、もう狂気的。

しかし、大喜利番組でレジェンドを獲っても、吉本の劇場作家になっても、世間の目は冷ややかでした。
世間から見放され、世間を敵対視する。
けれども、笑わせる先にいるのは世間の人々。

どうしようもない矛盾に、自分の中のカイブツがこう語りかけます。

「皮肉な話やな。おまえを死にたくて、たまらない気分にさせるのは、いつだって世間やのに、皮肉にも、おまえが人生を捧げた笑いは、その世間を楽しませるために、存在しとる」

大好きで始めた、お笑い。
これしかないと思っていた、お笑い。
自分の存在を唯一証明できる、お笑い。

自分を支えてきたお笑いが、ツチヤの首をぐんぐんと締めていく様は、読んでいて本当に苦しくなります。

それでも笑いに対して光を見いだせたのは、周囲の人間のおかげだったのではないでしょうか。

友達と言ってくれたピンク。
どうしようもない自分を愛してくれた元カノのアナタ。
お前と漫才がしたい、と東京に呼んでくれた売れっ子芸人のあの人。
そして、人生を丸ごと僕に捧げてくれたオカン。

ひとりぼっちだと思っていた自分が触れた温かさで、ツチヤは前に踏み出せます。


この本には、劇的な成功をつかむ主人公はいません。

世間が思い描く成功とは真逆の、貧乏で、みすぼらしくて、残念な人。

馬鹿にされてもいい。
蔑まれたっていい。

大好きな人たちがいて、大好きなことをする。

それだけで幸せなんだと思わせてくれる作品でした。


時系列もぐちゃぐちゃで、普段小説を読みなれている方からしたら、衝動的な文体で読みにくいかもしれません。
ですが、それすらもツチヤタカユキさん自身を表しているようで、この本の完成度を上げていると思えます。

読んだ後は心臓がぶち抜かれたような感覚になる一冊。

自分にとっての幸せって何かな。
そう考えているあなたに、ぜひ一読あれ。







コメント

  1. 金平糖 より:

    初めまして
    通りすがりですが、私もそちらの著作を一読しました。確かに私も似たような感想を書いていました。
    ちなみに、作者のツチヤタカユキさんはインスタをやっていますよ。そちらに次回作が紹介されています。

    • Light Ocean Light Ocean より:

      コメントいただきありがとうございます!

      わたし自身思い悩んでいた時この本に巡りあい、混じり気のない生きる素晴らしさに触れることができました。

      わざわざご紹介までしていただき、ありがとうございます。次回作も楽しみですね!

      これからは芸人さんのエッセイの感想も投稿していくので、よろしければ今後もご覧いただけると嬉しいです。

  2. […]  ケータイ大喜利のレジェンドからハガキ職人、構成作家時代の生々しい半生を残した代表作『笑いのカイブツ』はベストセラーで、来年には岡山天音さん主演のもと、映画化も予定されています。(代表作『笑いのカイブツ』の感想はこちら⇒https://light-ocean.net/books/warainokaibutsu-review/) […]

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